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最高裁判所第二小法廷 昭和57年(行ツ)97号 判決 1987年4月17日

主文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人田村徹の上告理由について

記録によると、本件訴えは、土地改良事業の施行に伴い被上告人土地改良区がその施行に係る地域内にある上告人の所有地について土地改良法(以下「法」という。)五四条に基づいて換地処分をしたのに対し、上告人が右換地処分はいわゆる照応の原則(法五三条一項二号参照)に違反し無効であるなどと主張して同処分の無効確認を訴求したものである。右訴えにつき、等一審は、実体審理をした上、上告人の請求に理由がないとしてこれを棄却したのに対し、原審は、右訴えは行政事件訴訟法三六条の要件を欠く不適法な訴えであるとして、第一審判決を取り消し、本件訴えを却下する旨の判決をした。

しかしながら、土地改良事業の施行に伴い土地改良区から換地処分を受けた者が、右換地処分は照応の原則に違反し無効であると主張してこれを争おうとするときは、行政事件訴訟法三六条により右換地処分の無効確認を求める訴えを提起することができるものと解するのが相当である。けだし、法五四条に基づく換地処分は、土地改良事業の性質上必要があるときに当該土地改良事業の施行に係る地域につき換地計画を定めて行われるものであり、右施行地域内の土地所有者等多数の権利者に対して行われる換地処分は通常相互に連鎖し関連し合つているとみられるのであるから、このような換地処分の効力をめぐる紛争を私人間の法律関係に関する個別の訴えによつて解決しなければならないとするのは右処分の性質に照らして必ずしも適当とはいい難く、また、換地処分を受けた者が照応の原則に違反することを主張してこれを争う場合には、自己に対してより有利な換地が交付されるべきことを主張していることにほかならないのであつて、換地処分がされる前の従前の土地に関する所有権等の権利の保全確保を目的とするものではないのであるから、このような紛争の実態にかんがみると、当該換地処分の無効を前提とする従前の土地の所有権確認訴訟等の現在の法律関係に関する訴えは右紛争を解決するための争訟形態として適切なものとはいえず、むしろ当該換地処分の無効確認を求める訴えのほうがより直截的で適切な争訟形態というべきであり、結局、右のような場合には、当該換地処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつてはその目的を達することができないものとして、行政事件訴訟法三六条所定の無効確認の訴えの原告適格を肯認すべき場合に当たると解されるからである。

してみると、以上と異なる見解に立つて本件訴えを不適法として却下すべきものとした原審の判断は、行政事件訴訟法三六条の解釈適用を誤つたものというほかなく、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件については、上告人の請求の当否について更に審理判断させるためこれを原審に差し戻す必要がある。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条一項により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島谷六郎 裁判官 牧 圭次 裁判官 藤島 昭 裁判官 香川保一 裁判官 林 藤之輔)

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